近年、国際的な商品の流通やサービスの提供の拡大に伴い、商標、意匠及び特許が各国に出願され、登録されている。
商品やサービスが国を跨いで国際的に流通するのに対して、知的財産法は、属地主義の原則から各国に出願し登録する制度を採用するため、出願人は各国に同様な手続を行わなければならず、煩雑極まりない手続が負担となっていた。
そこで、複数国への一括出願及び管理を可能とする制度が設けられ、我国は、1978年に特許協力条約(PCT)に加盟し、2000年に商標の国際登録制度(マドリッド協定議定書)に加盟し、2015年に意匠の国際登録制度(ハーグ協定)に加盟した。
PCT出願制度は、審査段階での出願人と各国特許庁との重複作業の解消を図るために、各国特許庁の実体審査の前に、新規性、進歩性(特許性)の判断資料を国際調査機関にて作成し、各国の国内段階の資料とし、審査の便宜を図ろうとするもので、審査の前提条件を統一するものであるから、商標や意匠の国際登録制度とは性格を異にしている。
このような制度を利用すれば、世界各国において、安価かつ迅速に同一の保護対象について権利を取得することが可能となる。そこで、まず商標の国際登録制度(マドリッド制度)の概要を説明し、次に意匠の国際登録制度(ハーグ協定)の概要を説明し、最後に特許のPCT出願制度の概要を説明する。
○商標の国際登録制度(マドリッド制度)について
目的・・・海外での商標管理支援
マドリッド制度では、締約国への一括出願・管理を可能にすることで、トータルコストや手続負担の軽減に寄与する。
マドリッド制度の骨子
・商標について複数国への一括出願を可能とする国際出願及び登録の手続を定めた制度
・本国官庁を通じた国際出願(基礎出願又は登録が必要)
・国際登録は国際登録日より5年間は基礎出願又は登録に従属(セントラルアタック制度)
・指定国において保護が認められるか否かの判断は、各指定国官庁が行う
・国際登録の変更や更新等は、国際事務局により一元的に管理
手続の概要 (次頁のフローを参照)
・本国官庁による審査
出願人により、基礎出願又は登録に基づいて日本国特許庁(本国官庁)に国際出願(願書:MM2)がされると、日本国特許庁は、願書の様式、出願人の適格、基礎商標と同一性、指定商品・役務の範囲をそれぞれ審査し、不備がなければ、国際事務局(WIPO)へ国際出願を送付する。なお、締約国の指定は、出願時だけでなく、後述する国際登録後にもする(事後指定)ことができる。
・国際事務局による審査
国際事務局は、指定商品(役務)の審査、分類審査を行い、出願人による基本手数料等の納付を確認すると、本国官庁が国際出願を受理した日を国際登録の日として国際登録する。
国際事務局は、国際登録簿への記録、国際登録証の出願人への送付、本国官庁への通知、指定国官庁への通報を行い、国際登録の情報を公報に掲載する。
・指定国官庁における審査
指定官庁は、国際出願は、指定国の国内法に基づき国内出願として審査され、審査の結果、登録要件を満たさない場合には、暫定拒絶通報を発する(通報期間内)。
暫定拒絶通報に対しては、出願人は現地代理人を介して拒絶理由に対して反論等をし、登録に努めることができる。
指定官庁は、国際出願が登録要件を満たしている場合や、暫定拒絶通報を撤回した場合、保護認容声明を国際事務局に送付する。
各指定国官庁における審査の状況は、国際事務局へ送付され、国際登録簿に記録される。

○意匠の国際登録制度について
目的・・・海外での意匠権の管理支援
国際意匠登録制度では、締約国への一括出願・管理を可能とすることで、トータルコストや手続負担の軽減に寄与する。
意匠の国際制度の骨子
・意匠について複数国への一括出願を可能とする国際出願及び登録の手続を定めた制度
・複数国における意匠権の一元的管理を国際事務局により行う
・指定国において保護が認められるか否かの判断は、各指定国官庁が行う
・国際登録の変更や継続年金の支払は、国際事務局により一元的に管理
手続の概要(次頁のフローを参照)
・本国官庁による審査
出願人により、日本国特許庁(本国官庁)に国際出願(願書:DM/1)がされると(国際事務局に直接行うことも可)、日本国特許庁は、願書の様式、図面の添付があるか審査し、不備がなければ、国際事務局(WIPO)へ国際出願を送付する。なお、締約国の指定は、出願時のみ可能で、国際登録後に行う(事後指定)ことはできない。
・国際事務局による審査
国際事務局は、方式審査を行い、出願人による基本手数料等の納付を確認すると、本国官庁が国際出願を受理した日を国際登録の日として国際登録する。
国際事務局は、国際登録簿への記録、国際登録証の出願人への送付、本国官庁への通知、指定国官庁への通報を行い(指定通報)、国際登録の情報を公表する(国際公表)。
・指定官庁における審査
指定官庁は、国際出願は、指定国の国内法に基づき国内出願として審査され、審査の結果、登録要件を満たさない場合には、拒絶通報を発する(通報期間内)。
拒絶通報に対しては、出願人は現地代理人を介して拒絶理由に対して反論等をし、登録に努めることができる。
指定官庁は、国際出願が登録要件を満たしている場合や、暫定拒絶通報を撤回した場合、保護認容声明を国際事務局に送付する。
各指定国官庁における審査の状況は、国際事務局へ送付され、国際登録簿に記録される。
図2
○特許の国際出願(PCT国際出願制度について)
目的・・・外国特許出願時の重複作業の軽減
国際出願の方式の統一を図り、出願時における手続の重複を軽減する。
PCT制度の骨子
・出願日を確保しつつ、翻訳文提出期間の延長を図る。
・各指定国に移行前に特許性を判断し出願人と各指定官庁で共有する。
手続の概要(次頁のフローを参照)
国際段階について
・管轄受理官庁への国際出願
出願人により国際出願がなされると、受理官庁は、出願書類の方式審査をした後、国際出願日を認定し、国際事務局及び国際調査機関に出願書類(願書、明細書、請求の範囲、要約、図面)を送付する。なお、優先権の主張期限は基礎出願日より12ヶ月以内である。
・国際調査機関による国際調査
国際調査機関は、出願書類を受領すると国際調査を行い、(1) 先行技術文献等を列記した国際調査報告及び(2)
特許性(新規性、進歩性等)の見解を記載した国際調査見解書を作成し、出願人と国際事務局に送付する。
・国際調査及び国際調査見解書に対する出願人の対応
出願人は、否定的な国際調査見解書に対して、請求の範囲について1回に限り補正(条約19条)することができる。また、後述する国際予備審査を請求することもできる。
・国際公開
国際事務局は、優先日から18ヵ月後に、国際出願の情報を公開する。
・国際予備審査
出願人は、国際予備審査の請求にあたり国際調査見解書に対する答弁書及び明細書等について回数制限のない補正が可能である(条約:34条)。国際予備審査機関は、出願人から国際予備審査を請求されると、提出された書類を考慮して国際予備審査報告を作成する。
国内段階について
・各指定官庁における審査
出願人は、優先日から30ヶ月までに、現地代理人を選任し、現地代理人を介して各指定官庁に対し国内書面及び翻訳文の提出、手数料の納付を行い国内移行する。

昨年は、今世紀最大の発明と云われる青色発光ダイオードの発明に対して、ノーベル賞が授与されました。3原色がそろったことで、映像機器の分野などで、新しい産業が芽生えています。
本年も新しい発明が世に出ることを望みたいです。
正月の2日3日は箱根駅伝の大会が開かれて、各大学の選手の走りに一挙一動に目が釘付けになり、応援をそして勝利と落胆が混じり合い、最後にすがすがしい気分を与えてもらった箱根駅伝であったと感謝しています。
この箱根駅伝の伴走車としてトヨタ自動車が製造の水素で走る燃料電池車「ミライ」が走っている映像が映し出されていて、見られたかと思います。
この「ミライ」に係る保有する特許が世界で5680件と聞いています。
この特許をトヨタ自動車では、水素で走る燃料電池車の服夕を促すために、競合会社に無償で提供すると発表がなされいます。
なかなか、太っ腹と思いますが、技術を公開により、世の中に普及してくればトヨタ自動車が、技術の世界標準となり、利益を得ることの狙いもあります。
特許は独占することも大事ですが、公開して技術の普及を図ることにも利益があることをお忘れなく。
本年も知的財産の創出・保護にも努力を惜しみませんので、よろしくお願い申し上げます。
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2014/03/19 B級グルメや、音・色も登録商標に 商標法の改正へ!
○ 地域と商品名で構成する「地域団体商標」が登録されていますが、登録できる主体が事業協同組合などに限られております。そのため、地元で人気の「B級グルメ」を登録しようとしても、登録主体の関係から、商工会議所やNPO法人が出願登録できず、権利関係の不明確化から、関係のない地域の業者が「ご当地」をうたって模倣品を売ることがあり、混乱を来たしていました。
今回の改正にて、B級グルメの登録商標化が可能となり、このような混乱を防ぐことができるようになります。
○ また、登録される商標の範囲を、「文字」「図形」「記号」等に加えて、新たに「音」や「色彩」も登録できるようになります。「色彩」を例として、トンボ鉛筆の「MONO消しゴム」の特徴である青、白、黒のストライプの色彩、「音」の例として、久光製薬の自社名をCMなどで紹介する音などをあげることができます。
○ 改正法律の施行日は、平成27年の春と思われます。
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